漫画・アニメ『昭和元禄落語心中』を10倍楽しむ手引き【作中の落語解説付き】

こんにちは、アフリカ在住ブロガーのぴかりん(@dujtcr77)です。

2017年1月よりアニメの第2期スタートが決定した『昭和元禄落語心中』。
原作は『ITAN』(講談社)で連載されていた雲田はるこさんによる漫画です。

今回は原作漫画・そしてアニメを楽しむための手引きをまとめました。

あらすじ(最初の方だけネタバレ)

この作品は「与太郎放浪篇」「八雲と助六篇」「与太郎再び篇」の全3部に分かれています。

ここでは、1巻~2巻冒頭の「与太郎放浪篇」の内容を中心にあらすじを紹介していきます。

与太郎放浪篇(1巻~2巻)

刑務所を満期で出所した元チンピラの与太郎。
刑期中にムショの中で聞いた名人・八雲の『死神』を忘れる事ができず、出所後すぐに八雲師匠に弟子入りを志願する。

弟子を取らないで有名な八雲だったが、何の気まぐれか与太郎の弟子入りを許す。

そんな与太郎がある失態を犯し師匠に破門を告げられる。

「俺はアンタに心底惚れてる」
与太郎の熱い思いと誠意ある謝罪を聞いた八雲は破門しない代わりに3つの条件を出す。

  1. アタシと助六(後述)の落語をすべて覚えること
  2. 死んだ助六と約束した「二人で落語の生き延びる道を作ろう」という約束を助六の代わりになってアタシと共に果たすこと
  3. 絶対にアタシより先に死なねぇこと

約束のあとに八雲は続ける。

じゃあひとつ お前さん方に話して聞かしてやろうか

あの人とアタシの約束の噺をさ

長ぇ夜になりそうだ 覚悟しな・・・

こうして若くして亡くなった天才落語家・助六彼を追いかけ1人残されてしまった八雲師匠の物語『八雲と助六篇』がはじまる。

八雲と助六篇(2巻~5巻)

八雲と助六の出会い、若き日の落語人生、そして助六の死までが八雲による語りという設定で描かれている。

助六再び篇(5巻~10巻)

八雲から過去の話を聞いた与太郎。

再び物語の中心が与太郎に戻りその後の落語人生が描かれる。

主な登場人物

与太郎

201611250603

主人公の元チンピラ。本名は強次。

刑務所の中で聞いた八代目・八雲の『死神』が忘れられず弟子入り。

八代目 有楽亭八雲

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「昭和最後の大名人」と称される人気落語家。

弟子は今まで取ったことがなかったが、与太郎の弟子入りを認め、はじめての弟子をとる。

小夏

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助六の娘。

助六の死後は八雲が引き取り育てられたが、「父を殺した敵」として八雲を恨んでいる。

二代目 有楽亭助六

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天才落語家と呼ばれるもある事件がきっかけで若くして亡くなる。

八雲とは同日入門の兄弟弟子。

みよ吉

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芸者で、小夏の母。

八雲・助六との間で複雑な関係を持つことになる。物語のカギを握る。

感想:今までにないタイプの作品

噺家の業を描く

今は亡き天才落語家・立川談志さんはこう言っています。

「落語とは人間の業の肯定である」

人間の欲望・好奇心・恐れといった人間の本質を描くのが落語であるということです。

『昭和元禄落語心中』もまさに人間の業を描いた作品。

ちょっとしたことでダメになったかと思えば、またちょっとしたことで持ち直す。
それぞれの過去や思いを背負って生きる登場人物たち。

そんな人間の飾らないリアルが落語という舞台、噺家という生き物を通じて伝わってきます。

声に出して読みたくなる漫画

昭和元禄落語心中(1) (ITANコミックス)

「ウウ寒い どっかで道を間違ぃちまった

このままじゃあ凍え死にしちまァ…」

漫画を読んでいて、音読を始めてしまったのは初めてのことでした。

ソファで寝っ転がっていたはずだった私が、いつの間にか正座してまるで高座に上がっているかのような心持ちで噺を始める。

前述のようにこの作品は人間の業を描いたものです。
名人と呼ばれる八雲でも、天才と言われた助六でも、自分たちが持っているような弱さがある。
なんだか近くにいるようなそんな存在。とても近づきやすい。

きっとこの作品を読んだらあなたも誰かになりたくなるかもしれません。

ずっと聞いていたいアニメ

昭和元禄落語心中

アニメはアニメでまた違った魅力があります。

ストーリーは原作に沿っているのでこれまで書いてきた通り。
なので当然面白い。

ですが、マンガの時と同じように不思議な感覚に襲われるんです。

ずっと聞いていたい。

主題歌からサウンドトラック、効果音、登場人物たちの噺まで、なんとも心地い良い。

1回観た後に作業をしながら2回目はラジオや音楽のように「聞く」。
邪道かもしれませんが私はそんな風に楽しんでいます。

椎名林檎さんが作詞・作曲・編曲のプロデュースを手掛け、
林原めぐみさんの歌う主題歌『薄ら氷心中』もエキゾチックで引き込まれます。

落語への挑戦

落語家は「噺のプロ」です。
落語家に「声で演じるプロ」である声優たちがなりきる。
ある意味、落語への挑戦でもあると思います。

これはまったくの個人的な意見になりますが、
この作品は従来の落語ファンを納得させるために存在するためにあるのではない。
(もちろん落語ファンでも楽しむことは出来ます)

『昭和元禄落語心中』という作品を通して、古き良き日本の文化『落語』の素晴らしさに気付く。
そんなところに意義のある作品だと思っています。

その意味で、一見無謀に見える声優や制作の挑戦は成功したと言えるでしょう。

私を含めもともと落語に興味のなかった多くの人が、このアニメを通じて落語に興味を持ったのですから。

漫画とアニメどちらから?

さて、まだ漫画も読んだこともアニメを観たこともない、どちらから始めようか迷っている方に。

個人的におすすめの順番はこんな感じです。

落語初心者はアニメから

まだ落語をほとんど知らないという方は、アニメから観ることをお勧めします。

落語のシーンも多く、漫画から読むとイメージがうまく沸かない可能性がある。

なので落語のシーンは音や動きと共に楽しめるアニメでイメージを膨らませてから、
漫画で再度じっくり味わう方が楽しめるかもしれません。

落語好きは漫画から

逆に、落語好きな方は漫画から読むと良いかと思います。

落語そのものに対するイメージが出来上がっているので、登場人物たちがどんな話し方をするのか、
自分なりに想像することが出来ます。

その後でアニメを観て「答え合わせ」をする。

助六はこんな声をしていたのか、こんな表現方法だったのかと、
自分の作ったイメージとすり合わせるのもまた一興です。

まとめ

いかがだったでしょうか?

私も『昭和元禄落語心中』など落語を題材にした作品を通じて落語の魅力を知りました。
これをきっかけに落語に興味を持つ人が増えたら嬉しいなと思います。

大爆笑をしたいなら最近のバラエティ番組や若手の漫才をみれば良い。

ではなぜ、落語は現代でも生き続けているのでしょう?
それは落語が単なる「こっけいな話」という領域にとどまらない一つの文化となっているからです。

そういった落語の良さを教えてくれる『昭和元禄落語心中』
是非手に取ってみて下さい。

 

作中に出てくる落語紹介

作品自体の紹介は終わりましたが、最後におまけとして作中で演じられた噺の概要を載せておきます。

これを知っていることできっと何倍もこの作品を楽しむことが出来るはずです。

漫画やアニメと見比べながら、より『昭和元禄落語心中』の世界を味わっていただければと思います。

死神 (コミック1巻 他)

与太郎が刑務所で聞き、八雲へ弟子入り志願するきっかけになった噺

金に困り、女房にもののしられる哀れな男。
自殺を考えるもそれすらできない。

そこに現れる不気味な老人。自分を「死神」と名乗る。

この死神から金儲けの方法を教わった男は、
欲望に目がくらみ死神とのある約束を破ってしまう

男は死神から裁きを受ける事となる。

より詳しい解説を書きました!
落語『死神』あらすじ・解説~初心者でも楽しめる落語~

応挙の幽霊 (1巻)

八雲が京都の夜会で演じた噺

骨董屋が客に「これは応挙の絵だと思うんですがね」と騙して高く売りつけようとする。

応挙とは?
江戸時代の画家・円山応挙(まるやま おうきょ)。
足のない幽霊の絵をはじめて描いたとされる。

客は「オウキョでもラッキョでも構わねえ」と言ってその絵を買うことに。

絵は明日届けることにし、骨董屋の主人は高く売れた祝い酒をひとりではじめる。

すると掛け軸から抜け出した幽霊が現れる。
色っぽい女だ。

主人と一緒に酒を飲んだ女と「さあ、一杯」差しつ差されつ飲み明かす。
酔った女は眠ると言って掛け軸の中へ戻っていく。
「いつ起きるんだい?」と聞いた主人。女は答える、

「あしたの丑三つ時まで寝かせておくれ」

宿屋の仇討ち (1巻)

八雲が小夏に父・助六の落語をやってみせた噺

やたら威勢のいい日本橋魚河岸の若い三人衆。
何をするにも一緒で自称「始終三人」

金沢八景見物の帰りに武蔵屋という宿に泊まった。

この三人と時を同じくして宿に泊まっていたのが1人の武士。
三人が騒いで眠れないもんだから宿屋の伊八を読んで静かにするように伝える。

それでもおさまらない騒ぎに、武士は嘘をついて三人を黙らせる。

出来心 (1巻)

チンピラの兄貴の前で与太郎が披露した噺

間抜けな泥棒が、親分から泥棒に入る際のアドバイスを受ける。

外からごめんくださいと声をかけて、
家人が出てきた場合はありそうもない人名をあげて居所を尋ねる、
盗みの間に家人が戻って来たら泣き落としだ。
「ほんの出来心」といえばたいてい許してもらえる。

それを聞いて盗みをはたらきに入った家には盗む者がないほどの貧乏長屋。
おまけに家人が帰って来てしまったので縁の下に隠れた。

荒らされた家の様子をみた家主、実は家賃を払う金すら持っていなかった。
それでこの状況をうまく利用しようと大家を呼んで用意していたはずの金が盗られた、あれもこれも盗られたと被害をでっちあげる。

頭へ来た泥棒は縁の下から飛び出した。
「おれはそんなものひとつも盗ってないぞ」

大家は家主に尋ねる。
「どうしてあんな嘘をついた?」

「大家さん、これもほんの出来心」

鰍沢 (2巻)

八雲の独演会で八雲師匠が演じた噺

江戸からの旅人・新助が吹雪に遭遇して、ようやく見つけたこの一軒家。
これを見つけられたのも南無妙法蓮華経とお題目を唱えたおかげか。

中にいたのは亭主の帰りを待つ美女。名前はお熊。

お熊は体が温まるからと玉子酒をふるまった。
新助は睡魔に襲われそのまま眠ることに。

お熊は酒屋に出かけて行った。

お熊がいない間に帰ってきた亭主の伝三郎はお熊が留守で機嫌を悪くした。
伝三郎は残っていた玉子酒を見つけて自棄のように飲み干した。
すると突然腹が痛くなりその場に倒れた。

その玉子酒には毒が入っていたのだ。
お熊は旅人を殺してお金を奪おうとしていた。
帰ってきたお熊は亭主が玉子酒を飲んだことを知り驚く。

騒ぎで目が覚めた新助。
家から逃げ出し昼間小室山でうけた毒消しの護封を口に入れ、
雪を頬張って飲み下す。

すがるのは南無妙法蓮華経のお題目ばかりだ。

亭主の敵と鉄砲を持って追ってくるお熊。
いかだで急流を下って逃げる新助。ひたすらお題目をとなえる。

岩に激突していかだはバラバラになり、新助は最後の1本にすがりついた。
断崖上のお熊は新助の胸元を狙い一発、弾はまげをかすって岩に砕けた。

「はあっ、助かった 一本のお材木(お題目)のおかげだぁ」

野ざらし (2巻 他)

後の助六となる少年が、七代目・八雲に入門をしに来た時に披露した噺

そそっかしい男、八五郎が隣の家の緒方先生の家にいって
「普段は女に興味がいないと言っているくせに昨日は若い女を家に引っ張り上げてきてたじゃないか」と問い詰める。

話を聞くと先生は趣味の釣りをしていて、魚が釣れないかわりに野ざらしの人骨を見つけた。
その人骨に南無阿弥陀仏と、ふくべにあった酒をかけてやると、気のせいか赤みがさしたような気がした。

良い事をしたと良い心持ちで家に帰ると、その夜に骨となっていた娘がお礼に来たという。

それを聞いた八五郎は自分も女の骨を釣りたいと川をひっかきまわして探す。
遂に骨を見つけ、適当なおまじないとお酒をかけて家に帰った。

それを陰で見ていたたいこ持ちの男。
夜になって八五郎の家の門をたたく。

「向島から来た?よう、待ってました!いらっしゃい…でもやけに声が太いねえ…お前は何者だ?」

「新朝というたいこです」

「新町の太鼓?しまった、あれは馬の骨だったか」

※落ちのわかりにくい噺。

昔は浅草の雷門から南千住へ行く途中に「新町」という太鼓屋がたくさんあるところがあった。
この太鼓の皮は馬の皮を使われていた。
それに、たいこ持ちのことも略して「たいこ」と言われていた。

八五郎の家を訪れた男が「新朝(という名前の)たいこ(もち)です」と答えたところ、
八五郎は「新町の(馬の皮で作られた)太鼓」と勘違いして馬の骨だったといったのである。

夢金 (2巻)

戦後、満州慰問旅から戻ってきた助六が二ツ目として演じた噺

山谷掘の舟宿、雪の降る夜には白い静寂が江戸を閉ざしているようだった。
その静けさを破るのは、ただ一人二階で眠っている船頭・熊の大きな寝言。

「百両欲しい、二百両欲しい」

そこへ戸を叩く音。
いけねえ、熊の野郎の寝言が強盗でも誘い込んだのではないか。
恐る恐る覗いてみるとそこには柄の悪い浪人と着飾ったお嬢様。

舟を出して欲しい、骨折り酒手を充分に取らせると言われ舟を出すことになった熊。

酒手とは、賃金以外に支払う心づけのお金。

舟の上で浪人に驚きの事実を告げられる。
妹だと言っていた女は実は雪道で癪を起しているのを介抱してやった金持ちの娘だという。
懐には百両あり、これを殺すのを手伝えば熊にも分け前の二両を与えるという。

「人を殺してまで金を欲しくない」
「分け前もたったの二両とは」
怒った熊は浪人を中州へ置き去りにして娘を助けて親もとへ。

両親からお礼と渡された袋には五十両と五十両、合わせて百両。
包みをぎゅっと握った瞬間あまりの痛さに目が覚めた。

なんと舟宿の2階で夢を見ていて、自分の睾丸(たま)をぎゅっと握ってた。

品川心中 (3巻)

若き日の八雲が「何のために落語をやるのか?」と自問しながら上がった高座で

昔は吉原に次ぐ歓楽街であった品川。
この品川新宿の白木屋のお染は板頭、すなわちこのお店のナンバーワンの女郎だが、このお染も寄る年波にゃあかなわない。

年に一度の衣替えの日には妓楼のやり手、若い衆などに自前で配りものをしなければならない。
しかし資金調達のめどはたっていなかった。

生き恥をかくならいっそ死んでしまおう。
でも金詰まりの自殺とは思われたくない、相手を見つけて心中しよう…
どうしようかねえ…心中っていってもどの人も可哀そうで…
あ、独りモンの本屋の金蔵さんがいい!

お染に流されるままに心中をすることにした金蔵。

しかし当日になって金蔵はカミソリは傷の治りが悪い、首つりはざまが悪い、海へ飛び込むと風邪を引くからと怖気づいている様子。
そうしているうちに白木屋の方から人のかげ。
邪魔が入ってはならないとお染は金蔵のへっぴり腰をついて海へ落とした。

お染も海へ飛び込もうとしたが店の若い衆に抱き止められてしまった。
その者によると番町の旦那が金を持ってきてくれたので死ぬ必要はないとのこと。

「でも一人さきに…貸本屋の金さんが…」
「ああ、あいつならいいや」

なんともひどい話。

金蔵はずぶぬれになりながらなんとか親分方へたどりつき、おもての門を割れんばかりに叩いた。
中では賭場を開いていたから役人の手が入ったと勘違いで大騒ぎ。

※この後に仕返しの場があるが面白くなく、サゲ(落ち)も上等でないためほとんど上演されない。そのため賭場で大騒ぎする爆笑劇のところまでとする。

居残り (3巻 他)

真打披露の場で助六が演じた噺

仲間三人を連れて吉原に次ぐ歓楽の地・品川で豪遊をした佐平次。

金がないのに開き直って店の人を煙に巻いて居残りとなる。
どさくさに紛れて店で働きはじめりゃ人気が出てお小遣いまで稼ぐ始末。

店としてはこんなに長くいられたらたまったもんじゃない。

出て行ってくれと言われ、店の主人をだましてお金と着物をもらって出ていった。

不審に思った店の若い衆が声をかけ、はじめて佐平次の正体を知った。

「旦那、あいつは居残りを商売にしている佐平次というやつでした」

「なに、居残り商売だと、じゃあ俺は詐欺(おこわ)にかかったのか」

「へえ、旦那の頭が胡麻塩ですから」

子別れ (4巻)

七代目八雲が倒れる直前に演じた噺

亭主の酒と女遊びが原因で別れることになってしまった夫婦。

孤独になった元亭主の熊さんは心を入れかえて仕事に打ち込んだ。
もとより腕の良い大工。
三年ほどで立派な棟梁格と扱われるようになった。

ある日、熊さんはすっかり成長した息子の亀吉を見かける。
「亀!」と声をかけると「父ちゃん」とやってくる我が子。

亀吉に小遣いを握らせ、あしたは鰻をおごってやろうと約束。
「お父っつあんに会ったこと、おっ母さんには内緒だぞ」
小遣いを握りしめ、喜んで駆け去る亀吉の姿が、熊さんの涙でかすんだ。

母は家に帰ってきた亀吉が握っていた子どもには分不相応な金額のお金を見て驚く。
誰にもらったんだと尋ねると「知らないおじさん」という。

盗みをおこしたのではという疑念が湧き問い詰めるも
「盗んだんじゃない、もらったんだ!」

だから誰にもらったんだい!
言わないと、お父っつあんが使ってたこの玄能で頭を叩くよ!

「…、お父っつあんに貰ったんだい」

亀吉はお父さんと会ったこと、お父さんが言ったことや真面目に働いている様子を話した。
「…で、あの、お父っつあん、おっ母さんのこと何か言ってたかい?」
「なんだ、両方で同じようなことを聞く」

翌日亀吉は父と鰻屋へ。
母も気になって鰻屋の前をウロウロし、子供の呼びかけで夫婦は三年ぶりに顔を合わせた。
熊さんは謝罪をして復縁。

「子はかすがい(二つの木材を繋ぎ止めるためのコの字の釘)っていう通りだねえ」

「あたいがかすがい?だからおっ母さんはきのう、玄能で打つといったんだね」

芝浜 (5巻)

八雲と助六が開いた温泉旅館での「有楽艇二人会」にて

別記事でまとめていますので以下の記事をご参照ください。

年末に聞きたい古典落語『芝浜』あらすじ・解説

浮世床 (5巻)

真打昇進が決まった与太郎、都内に唯一となった寄席にて

昔は娯楽が少なくて、若い衆がこぞって髪結い床にたむろしていた。

誰だ、こんなところで寝ているやつは。半公、起きろ!

「うるせえな、俺は女で疲れてるんだよ」

お?女の疲れたア大きくでたな。何があったんだ?

「聞きたいなら聞かせてやろう。芝居見もので二十三、四のオツな女と知り合った。

茶屋の二階で差し向かい。トントンパシャリンチンカラリン」

何だそれは?

「茶屋の女中が酒の支度をして下から上がってくる音だよ。
梯子段をトントンと上がる。
盃洗の水がお盆にパシャリン、
浮いているチョコがぶつかり合ってチンカラリン

飲み過ぎて気分が悪くなったから布団を敷いて横になった。
今度は女が攻めてきた。
私もお布団の端へ入れて下さいまし…と言ってね」

お、面白くなってきた、それでどうした?

「ごめん遊ばせ、と帯を解いて長襦袢(着物の下に着るもの)姿になると布団の中へ。
というところでよくも俺を起こしたな!」

夢だったのかい!
ワアワア騒いでいるのを床屋の亭主が制した。
どさくさに紛れて勘定を払わなかったやつがいる!

それは、痩せた、袢纏着のやつかい?
あいつは畳屋の職人だぜ。

それで床を踏み(踏み倒し)に来たんだ。

つるつる (5巻)

与太郎の真打昇進披露興行にて八雲師匠が演じた噺

吉原の幇間(たいこ持ち)・一八は、
副業に芸者置屋を営む師匠の家に居候している。

美人の芸者・お梅に四年半越しの岡ぼれだが、
なかなか相手の気持ちがはっきりしない。

その情にほだされたお梅。
「いつか寝ずの看病をしてくださったわね。
あたしは芸人の色だの恋だのって気にはなれないけど、
女房にしてくれるというのなら構わないよ」

大喜びの一八だが、ところがまだあとがある。
今夜二時に自分の部屋で待っているが、
おまえさんは酒が入るとズボラだから、
もし約束を五分でも遅れたら、ない縁とあきらめてほしい、
と釘を刺されてしまう。

一八は大喜びだが、
そこへ現れたのがひいきのだんな樋ィさん。

吉原は飽きたので、
今日は柳橋の一流どころでわっと騒ごうと誘いに来たとか。

今夜は大事な約束がある上、
このだんな、酒が入ると約束を守らないし、
ネチネチいじめるので、一八は困った。

今夜だけは勘弁してくれと頼むが、
「てめえも立派な幇間のなったもんだ」
と、早速嫌味を言って聞いてくれない。

事情を話すと、
それじゃ、十二時まで付き合え
と言うので、しかたなくお供して柳橋へ。

一八、いつもの習性で、
子供や猫にまでヨイショして座敷へ上がるが、
時間が気になってさあ落ちつかない。

遊びがたけなわになっても、
何度もしつこく時を聞くから、
しまいにだんながヘソを曲げて、
おまえの頭を半分買うから片方坊主になれの、
十円で目ん玉に指を突っ込ませろの、
五円で生爪をはがさせろの
と無理難題。

泣きっ面の一八、
結局、一回一円でポカリと殴るだけで勘弁してもらうが、
案の定、
酔っぱらうとどう水を向けてもいっこうに開放してくれないので、
階段を転がり落ちたふりをして、
ようやく逃げ出した。

「やれ、間に合った」
と安心したのも束の間。

お梅の部屋に行くには、
廊下からだと廓内の
色恋にうるさい師匠の枕元を通らなければならない。

そこで一八、
帯からフンドシ、腹巻と、
着物を全部継ぎ足して縄をこしらえ、
天井の明かり取りの窓から下に下りればいい
と準備万端。

ところが、
酔っている上、安心してしまい、
その場で寝込んでしまう。

目が覚めて、
慌ててつるつるっと下りると、
とうに朝のお膳が出ている。

一八、おひつのそばで、
素っ裸でユラユラ。

「この野郎、寝ぼけやがってッ。何だそのなりは」
「へへ、井戸替えの夢を見ました」

引用・参考:落語あらすじ事典 千字寄席

錦の袈裟 (6巻)

納涼二人会にて三代目助六(与太郎)が披露した噺

隣町の連中が長襦袢(着物の下に着るもの)を揃って来て吉原を派手に盛り上げたという。

悔しがった若い連中はこっちは上等な布でふんどし締めて裸踊りをしてやろうと企む。

仲間に誘われた与太郎。
まずは女房の許可を取らねばという。

吉原に行くのに女房にお伺いを立てるなんていうのは変な話だが、
町内のつきあいなら仕方ないと許してくれた。

女房と相談してふんどしにするための布を和尚さんの錦の袈裟を借りる事に。
取りつかれたキツネを払うと嘘をつき、和尚から新品の袈裟を借りてしまった。
あす法事をするので今晩使って明日の朝返すという約束だ。
返し忘れたら大変なことになる。

家へ帰って占めてみると与太郎の股間は金ぴか。
その夜は与太郎がたいそうモテた。
他の仲間はみなフラれてしまう。

ばかばかしい、おい与太郎、先に帰るぞ。

「待ってくれ、おれも一緒に帰る」

花魁は与太郎を離さない。
「いいえ、どうしても今朝は返しません」

「大変だ袈裟を返さないとお寺はおおごとだ」

時そば (7巻)

小夏と助六(与太郎)の息子・信之助が見守る中、助六が披露した噺

別記事でまとめていますので以下の記事をご参照ください。

落語『時そば』あらすじ・解説

明烏 (7巻 他)

助六の時そばの次に八雲師匠が演じた噺

別記事でまとめていますので以下の記事をご参照ください。

落語『明烏』あらすじ・解説

寿限無 (7巻)

幼稚園の落語会で小夏が演じた噺

別記事でまとめていますので以下の記事をご参照ください。

『寿限無』いちばん有名な落語!?あらすじと解説

反魂香 (7巻)

八雲師匠と助六(与太郎)の親子会で八雲師匠が倒れる前に披露した噺

夜中に鉦(かね)をカンカン叩いて念仏が聞こえる。
それも夜毎とあっては気味が悪くてしょうがない。

長屋の隣に住んでいた八五郎、耐えきれず苦情を言いに行った。

住んでいた老人の正体はいまは道哲と名乗り、
若き日は因州鳥取の藩士で島田重三郎という者。
毎晩の行為は亡き妻の回向(死者の冥福を祈ること)だという。

吉原の三浦屋の高尾大夫と言い交わし、末は夫婦と誓ったが、
仙台・伊達候の邪魔が入り、大名に身請けされても操を立て通し、
高尾は仙台候になびかず、遂にはその刃にかかって果ててしまった。

それが不憫でこの魂返す反魂香を焚いて弔っている。
すると高尾の姿が現れるのだという。

試しに一度見せてもらった八五郎。
自分も三年前に亡くした妻に会おうと薬屋で同じものを探そうとする。
しかし香の名前を忘れてしまった。

何があるんだい…越中富山の…反魂丹!これだ!

家に帰って試すも出てこない。
面倒くせえ、袋ごとぶっこんじまえ!
家じゅう煙で真っ黒になってしまった。

戸をたたく音、女の声。
女房のお梅じゃないか?

「隣のお咲だよ。きな臭いけど火事じゃないかい」

初天神 (8巻)

八雲師匠の入院中に、助六(与太郎)がつとめたトリで演じた噺

今日は仕事が休み、初天神詣でに行こう。

そこへ息子の金坊、
「お父っつあん、どうしたの羽織なんか着ちゃって
天神へ行くんだね。連れてっておくれよ」

だめだ、おめえを連れて行くと
「あれ買って、これ買って」だ。
うるさくてしょうがねえから連れて行かねえ。

駄々をこねる息子を
「あれ買って、これ買って」と言わない約束で連れて行くことに。

「ねえ、今日は買ってって言わないからいい子でしょ?」

そうだな。

「じゃあご褒美に何か買っておくれよ」

この野郎、またはじまった。
言い始めたら聞かない金坊。
飴玉を一個買ってやった。

水たまりに足を入れそうになった息子。
たたいて叱ると泣き始めた。

おいコラ、叩かれたくれえで泣くやつがあるか。

「叩かれて泣いてるんじゃねえやい。
いきなり叩くから飴玉落っことしちゃった」

なに!?どこへ落としたんだ?

「お腹ン中へ落っこったィ」

さらに詳しいあらすじ・要約は以下のページへどうぞ。

落語『初天神』あらすじ・解説

東の旅 (8巻)

助六・満月の二人会で満月が演じた噺

大阪を陽気に旅立つ喜六と清八。

ぽちぽち陽気もよくなった頃、喜六と清八のウマの合う二人、
お伊勢参りでもしようかと、黄道吉日を選び、大勢の人に見送られて安堂寺橋から東へ東へと旅立つ。

玉造の二軒茶屋で、見送りの連中とす(酸)いい酒を飲み交わし、
あとは二人連れ、中道、本庄、玉津橋から笠の名所の深江で「深江笠」を買い、
くらがり峠(暗峠)、榁木(むろのき)峠を越えて尼ケ辻の追分から南都奈良へと入った。

奈良には印判屋庄右衛門、小刀屋善助二軒の大き な旅篭ある。
何日逗留しても、夜具と家具が変わるのが自慢だ。
二人は印判屋の泊って翌朝は早立ちし、野辺へとやって来る。

百人ばかりの陽気な道中連とすれ違ったり、尻取り遊びをしながらの道中だ。
そのうちに喜六が大きな声で「腹減った」と言い出す。
清六はそんな無粋な言葉では百姓に笑われる、「腹はラハ」とひっくり返して隠し言葉を使えという

。清六が人の体は何でもひっくり返ると言うと、
喜六は目・手・耳なんて並べて、清六の面目は丸つぶれ
、喜六は「とこまに、ぼくめんだいしもない」(まことに面目次第もない)と思わないかと一枚上手だ。

そのうちに道沿いに煮売屋を見つけて入る。
品書きを見て、「口上」や「貸し売りおことわり」なんかを注文したり、
オヤジが「いろは」の文字に濁りを打てば その音が変わるというので、
「い・ろ・に」などを並べて、濁りを打って言って見ろと店のオヤジをからかう。

どじょう汁を頼むとこれから婆さんが山越え三里の町まで味噌を買いに行き、
オヤジは裏の水溜りでどじょうをすくって来るという。
それならくじら汁と言うと、オヤジは「熊野の浦へ鯨買いに行く」で、
まるでおちょくられているみたいだ。

何やかやで、やっと高野豆腐にかつを節のだし汁をかけてもらうことで一件落着。
そうなれば酒だ。オヤジは村の銘酒を勧める。
「村さめ」に「庭さめ」に「じきさめ」だ。
村を出る頃に醒めるから「村さめ」、庭に出ると醒めるから「庭さめ」、飲むとすぐに醒めるから「じきさめ」だ。

清六 「酒ん中にぎょ~さん水混ぜるんやろ」

オヤジ 「そうではねえ、水ん中へ酒混ぜる」

清六 「水臭い酒やなあ」

オヤジ 「酒臭 い水じゃ」

参考・引用:「東の旅」(1)発端~煮売屋

愛宕山 (8巻)

助六・満月の二人会で助六が演じた噺

京都は春。愛宕の山遊び。
旦那が芸子やたいこ持ちなどを大勢連れて登っていく。

土器(かわらけ)を投げて谷に架けられた的の輪に通す遊びがはじまった。
旦那は今度は小判を使おうと言い出す。

計30枚、一枚も輪を通ることなく谷底へ。
拾えば拾ったヤツのものと言われてたいこ持ち・一八の顔色が変わる。

深い谷へと飛び降りて全額回収。
「どうやって上がろう…」

一八は着物を脱いでビリビリ…
裂いて長い紐をこしらえるとそいつを嵯峨竹へ引っかけて、
竹の力を利用して崖の上にヒラリ。

よくやった!
で、金は?

ああ…忘れてきた。

もと犬 (9巻)

オヤジの逮捕後、こっそり寄席に来ていたアニキの前で披露した噺

別記事でまとめていますので以下の記事をご参照ください。

落語『元犬(もと犬)』あらすじ・解説

たちきれ線香 (9巻)

鈴ヶ森刑務所での慰問公園にて八雲師匠が演じた噺

昔はお茶屋に芸者が入ると、お線香を一本立てる。
この線香が「たちきり」といって火が尽きる時間で料金を算定した。

さる大家のうぶな若旦那が、ミナミの娘芸子・小糸と相思相愛の仲になった。
夜も昼も小糸のもとへ通い詰める若旦那。

困った親族は話し合いの末、百日間の蔵住まい、
軟禁処分ということに。

若旦那が蔵に入ってすぐ、ミナミから若旦那宛に女文字の手紙が一通。
番頭が受け取って若旦那には見せないまましまいこむ。

こうしている間に百日が過ぎ、若旦那は心を入れかえ出てきた。
その様子をみた番頭は手紙が届いていたこと、
そしてその手紙が八十日で途切れたことを伝える。

若旦那は百日ぶりに外へ出て、小糸のもとへ。
しかし小糸は死んでいた。

手紙の返事がなく若旦那に捨てられたと思った小糸は、
何も食べずみるみる衰弱していった。

ちょうど八十日目、若旦那と小糸の紋を比翼にあしらった三味線が出来上がってきた。
小糸は体を支えられて寝床の上に起き直り、
ひとまずシャンとはたいたきり、
もうツライと横になってそのまま果ててしまった。

今日は小糸の三七日(みなのか)。
ねえ、この三味線が聞こえませんこと。
あの娘が、あなたの好きな地唱『雪』を唄ってますわ。

三味線の音が消えた。
「もう少し聞かせておくれ」

若旦那、もうだめですよ。
仏壇のお線香が、断ち切りました。

二番煎じ (10巻)

あの世の入り口で二代目助六が演じた噺

火事の多かった江戸。
番太郎というのを雇って町内を見回って歩いていた。

大店の主人たちは火の用心の夜回りも番太郎まかせにせず、
二組に分かれて町内を回ることに。

一組目が見回りを終えて番小屋へ帰ってきた。
隠し持った酒を持ち出すものが現れた。
この寒さでは酒を飲まずにはやっていられない。

しかし番小屋で酒はご法度。
表向きは煎じ薬として酒を飲み鍋まで始めた。

そこへ市中見回りの役人がやってきた。
「あれはなんだ?」

風邪薬を煎じておりました。

「拙者も風邪をひいておる。
煎じ薬とあらば一杯もらおう」

恐る恐る茶碗についで渡す。
役人はおもむろに一口飲み、舌を打った。

「良い煎じ薬だ
鍋の様なものは何なのだ?」

薬の口直しです。
役人、舌を鳴らして猪肉を賞味。

「結構な口直しだ、煎じ薬をもう一杯」

ええ、すみませんが煎じ薬はもうありません。

「さようか。ないなら仕方ない。

拙者もう一回りしてくる間、二番を煎じておけ」

 

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