読書

漫画『3月のライオン』の感想・名シーン(大きなネタバレなし)

2016年10月8日からアニメ、来年には神木隆之介主演で映画化もされる『3月のライオン』。

『3月のライオン』は、『ハチミツとクローバー』という大ヒット作をもつ羽海野チカさんが『ヤングアニマル』で連載中の作品です。

今回はまだ読んでいない方のために、その魅力をお伝えしたいと思います!

あらすじ

東京の下町に暮らすプロの将棋棋士・桐山零(17歳)。

彼はずば抜けた将棋の才能を持っており、史上5人目となる中学生でのプロ棋士デビューを飾り「名人」となることを期待されている。

しかし彼は幼いころ事故で両親と妹を失い、深い孤独を抱えていた。

その大人しい性格、そして将棋しかやってこなかったことから友達と呼ぶことのできる人もおらず学校では「空気」扱い。

そんな彼の前にあらわれたのが、あかり・ひなた・ももの3姉妹。

彼女たち、そしてなにかと桐山を気に掛ける高校の教師やライバル棋士たちとの関わりを通じて何かを取り戻していく…。

とても優しく「強さ」と「弱さ」を突きつける

この漫画の魅力は、人間の「強さ」と「弱さ」が詰まっているところ。

各キャラ、各シーンを通して色んな形の「強さ」と「弱さ」を知り、また時に自分のそれを見つめなおすことが出来ます。

主人公・桐山零

主人公の桐山は、将棋の強さはピカイチです。

しかし彼自身、将棋が大好きだからこの道を選んだ訳ではありません。生きるために、将棋しかないから、将棋を選んだ。

史上5人目となる中学生でのプロ昇格。もちろん将棋界では注目の的だし、次期名人としての期待も高い。

しかしそれ以上に、将棋をやればやるほど彼には失うものがありました。

養子として受け入れてくれた家庭の義姉・義弟を深く傷つけ、学校でも周りから気味悪がられる。いくら将棋が強く、経済的に自立していたとしても彼はまだ17歳の青年です。

勝てば勝つほど深みにはまっていってしまう感覚、でも自分には将棋しかないから引き返すこともできない。

そんな彼の心境を描写したワンシーンがあります。

お世話になっているあかりさんの祖父から「お前はどこ行きてえんだ?」と聞かれ。

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そう言われてやっと気づいた

「行きたい所」なんて無いって事に

どうやら僕は「どこかに行きたかった」のではなく

「どこかへ行ってしまいたかった」という事らしいのだ

引用:『3月のライオン』

「心友」?二階堂

物語の序盤からグイグイと主人公の桐山に絡む自称ライバルの二階堂。第一印象は「ウザい」(笑)

もう初登場の1コマ目からウザい。

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桐山ほどの才能を持っていないのに、自分を「ライバル」と言い、2人で将棋界の伝説になろうとしています。

おそらく既にこの漫画を読んでいる方も、これから読む方も、二階堂が最初っから大好きという人はほとんどいないのではないでしょうか?

でも物語を読み進めていくと、自然と二階堂ファンになってしまう。そんな人もまた多いかと思います。

二階堂の「強さ」はとにかく将棋に対する前向きな姿勢。そして「ライバル」であり「心友」(どちらも自称)である桐山を想う気持ち。彼の優しさと強さに桐山は心を動かされていきます。

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出るさ 絶対にタイトルに挑戦する。

そう決めている

そう思わないでどうしてやっていける

引用:『3月のライオン』

しかし彼も強いばかりではありません。幼いころから病気持ちで、しかもそれは難病と言われ一生付き合っていかなければならないものでした。

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将棋まで 「弱い人間扱い」されたら

もうボクはどこで生きて行ったらいいんですか!?

引用:『3月のライオン』

病気で「弱い人間扱い」される二階堂にもまた、残されたのは将棋だけでした。

だからこそ前向きに、ひたむきに、桐山とは違う形で将棋と向き合っているのが二階堂という男です。(もう大ファン)

棋士たちの強さ・弱さ

桐山や二階堂以外にも、それぞれの「強さ」と「弱さ」が垣間見えます。

たとえば一見もの静かで痛む体とプレッシャーに耐え、すさまじい粘りの将棋を見せる島田八段。

同い年の宗谷は圧倒的な強さを持つ名人となっており、その差は縮まりません。でも彼は諦めない。

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どんなに登り詰めても決してゆるまず 自分を過信することがない

だから差は縮まらない どこまで行っても

しかし「縮まらないから」といって それが

オレが進まない理由にはならん

引用:『3月のライオン』

島田八段以外にもそれぞれの「強さ」を持って、勝負に、自分の「弱さ」に打ち勝っていこうとする多くの棋士たち。

彼らを通して勝負の世界の過酷さ、そしてそこで戦う棋士たちのかっこよさ、人間らしさを垣間見ることができます。

「やさしさ」という強さ

強さを見せるのは将棋の世界だけではありません。

桐山がであった3姉妹も、相手を思いやる「やさしさ」という名前の強さを持っています。

たとえば次女のひなちゃん。彼女はクラスメートがイジメられてる中、ひとり変わらず彼女と接し守ってあげました。

しかしイジメられていたチホちゃんは不登校となり、最終的に転校してしまいます。

そして、イジメの矛先はついにひなちゃんに向いてしまいます。

いつも明るく、いじめられている子を守る「強さ」をもつひなちゃんですが、彼女もまた子供。家族や桐山の前では我慢していたものが爆発してしまいます。

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林田先生

1年の時に桐山の担任だった林田先生。

彼は孤立しがちな桐山を何かと気にかけてくれています。普段はおちゃらけていながらも、肝心なところで桐山を導いてくれる、本当に良い先生です。

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あのな 大事な話だぞ? いいか?

一人じゃどうにもならなくなったら 誰かに頼れ

でないと実は 誰も お前にも 頼れないんだ

引用:『3月のライオン』

そんな林田先生の「弱いものへの優しさ」という名前の強さは、学生時代に彼自身が弱い人間だったから、同じような生徒たちの気持ちが良くわかることから来ているんだと思います。

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オレが17歳の頃は

「もしかしたら 結構自分はスゴイヤツになるんじゃないか」 なんて根拠のない夢とか見ながら

ゲーセン行ったり マンガ読んだり 友達と遊んだりテレビ見たり…

家賃の心配も 貯金もしたこと無かった

そうじも 飯の支度も洗たくも したこと無かった

何も成果がなかったなんて言うなよ がんばってたよ 俺は見てたよ

引用:『3月のライオン』

さいごに

いかがだったでしょうか?

人間の強さや弱さがページからにじみ出てくるかのようなこの作品。

今回紹介した以外にも、まだまだたくさんの見どころがあります。

既に大人気マンガですが、アニメ化に映画化にさらに勢いが増していく『3月のライオン』。

皆さんも是非お試しあれ!明日からはじまるアニメも見逃せません!!

 

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