こんにちは、アフリカ在住ブロガーのぴかりん(@dujtcr77)です。
今回は落語『厩火事』の紹介をします。
あらすじ
むかしは、髪結いさんというものがいて、ほうぼうのお宅をまわって髪を結ってあるいていました。
これがけっこうな収入になったんだそうで。
髪結いで話し出すと止まらなくなるある女が、仲人のもとにやってきた。
旦那のほうはあそんでばかりで夫婦げんかが絶えず、いつもの通り喧嘩の愚痴をもらします。
「本来はかばいたい所だが、でも、かばえやしない。
おまえさんの亭主についちゃあ、あたしゃ気に入らないことがあるんだ。」
聞くところによると、ある日その亭主が刺身1人前と酒を飲んでいるのが気に入らないと。
「女房のお前さんが、稼ぎまわっている間に、いくら亭主だからって、まっ昼間から酒を飲んでるって法はあるまい。
もう縁がないんだよ。遠慮なく別れなさい。」
なにも、うちの人が、お刺身を百人前もあつらえて長屋じゅうにくばったわけじゃないし、二升も三升もお酒飲んでひっくり返ったわけじゃないし…
お酒の一合や刺身の一人前やってたって、なにもそんなにおっしゃらなくてもいいじゃありませんか。
「おいおい、お前さんが愛想尽かしたというから、あたしが言って聞かせたんじゃないか。」
やっぱりおいそれと別れられませんねえ。
あたしゃ、あの人よりも七つも年上なんですから、いろいろと心配になってきて…
しまいには「あんないい亭主はどこを探したっていないと思うくらいに優しい時もある」とノロケ話を始める始末。
そこで仲人は男心を試すのにおもしろい話を2つきかせる。
孔子
唐の国の偉い学者、孔子が愛でる白馬がいた。
ある日、弟子たちに「この白馬はわたしの大事な馬だから、どうかとくに大切にとりあつかってくれ」と言って留守にした。
その留守中に厩が焼けて白馬は焼け死んでしまった。
旦那さまの愛馬を焼き殺してしまっておわびをすると、
「家来の者一同にけがはなかったか」と聞いた。
「家来一同無事でございます」と答えると「ああ、それはめでたい」といって家来たちを叱ることはなかった。
麹町の殿さま
もうひとつは麹町にいたある殿さまの話。
その奥さまが、殿さまの大事にしている瀬戸物を運んでいる途中に階段で足をすべらせてしまった。
すると殿さまが目の色を変えて飛んできて、
「瀬戸物をこわしゃしないか、皿をこわしゃしないか」と息もつかずに36回も言った。
奥さまは壊してはならないとかばったから、瀬戸物は無事であった。
「いいえ、瀬戸物はなんともございません」
「ああ、瀬戸物は無事だったか。それは良かった」
あとで実家から「娘よりも瀬戸物のほうがお大事なんでございましょう。そんな不人情なとことへかわいい娘はやれない」
と言われ離別。その殿さまは生涯独身で終わったという話。
― ― ― ― ―
この髪結いの亭主も瀬戸物を大事にしているということで、仲人は瀬戸物を壊して亭主がどんな反応を見せるか試すようにすすめました。
家に帰って亭主の大事にしている瀬戸物を壊してしまった。
どっか怪我はなかったか?指かどっか痛めなかったか?
瀬戸物なんざ銭をだしゃあくらでも買えらあ。
それよりも、どっかからだを怪我しなかったか?
おまえさん、そんなにあたしの身体が大事かい?
おめえが手でも怪我してみねえ。
あしたから、あそんでて酒を飲むことができなくならあ。
解説
題名は、噺の中にも出てくるように、
「厩焼けたり、子朝より退き、人は傷つけざるやとのみ言いて、問いたまわず」(『論語』)という文章によるもの。
女主人公が無知であるために、逆にその純情っぷりが目立つという所がおもしろい。
引用・参考:『古典落語(上)』
八代目桂文楽の十八番
戦後は八代目桂文楽が、お崎の年増の色気や人物描写の細やかさで、押しも押されぬ十八番としましたが、
ライバル五代目志ん生も得意にし、お崎のガラガラ女房ぶりで沸かせました。
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