落語

落語『出来心』あらすじ・解説

こんにちは、アフリカ在住ブロガーのぴかりん(@dujtcr77)です。

今回は落語『出来心』の紹介をします。

あらすじ

落語に出てくる泥棒というのはあまりしっかりしたのはいないもので。

ドジでまったく将来の見込みがない泥棒。

親分に堅気になったらどうかとすすめられる。

あたしもこれからは心をいれかえて一生懸命に悪事を働きますから、

どうか今まで通りおいてやってください

「そう言うならおいてやらねえこともないが、少しはまともな仕事をしてみろい」と言われ、泥棒はこの前はたらいた悪事の話をする。

しかし聞いてみると、

土蔵破りをしようと思って間違えて練塀を破ってお墓に侵入しただとか、
庭のある家に侵入しようとしたら日比谷公園に入っちまっただとか、
きちんと片付いて電話のある家を選んで入ったら交番だったとか。

こいつにはまともな盗みをできないと判断した親分は空巣をすすめる。

空巣ってのは何ですか?

泥棒のくせに空巣も知らないのか…

空巣ってのはちょいと留守にしている間に盗みに入るんだ。

そいつはたちがよくねえ

たちのいい泥棒がいるもんか。

親分はこの泥棒に空巣のやり方を一通り教えた。

留守だと思った家を見つけたら声をかけてみるんだ。
返事がなければ盗みをはたらく。
返事がなくて盗みをしているとことを見つかったら謝っちまうんだ。
「まことに申しわけございません。貧の盗みの出来心でございます」と。
泣き落としでいきゃあ許してくれるどころか、銭のひとつでももらえるかもしれねえ。

返事があったら「この近所になに屋なに兵衛さんてかたはいらっしゃいますか?」と尋ねるんだ。
なにか言ったら、ありがとうございますと礼を言って出てくればいい。

空巣のやり方を教わった男は、さっそく出かける。

ごめんくださーい!

(あ、人が出てきた)

いえ…その…なに屋なに兵衛さんのお宅はどちらですか?

「なに屋なに兵衛さん?何言ってんだおめえは?」

あ、あのー…このあたりにちょうちん屋ぶら右兵衛というお方はいらっしゃらないでしょうか?

「そんなやつ知るわけないだろ」

失敗した男は次の家へ。
こんどの家には人がいないと思って入ると、2階から人が降りてきた。

あ…このあたりにちょうちん屋ぶら右兵衛というお方なんていないですよね?

「おれがぶら右兵衛だよ」

ええ?あなたが?

いや、あなたでない、もっといい男のぶら右兵衛…

「なんだと!?」

さ、さようなら!

いやあ驚いた、ちょうちん屋ぶら右兵衛なんて名前のやつがいるなんて。

逃げたはずみで薄汚い長屋に迷い込んだ泥棒の男。

あんなところへ越中ふんどしを干したりして、汚い家だなあ。

まあ何もないよりいいから、とりあえず盗んでおくか。

お、七輪にはおじやだ、ちょうど小腹が空いてたんだ、うん、こいつはなかなかうめえや。

そうこうしているうちに誰かが帰ってきた!
男は急いで縁の下へ隠れる。

家主の八五郎は帰って来て異変に気が付いた。

「こりゃ泥棒が入って俺のふんどしを持っていったな。おじやも食っちまったらしい」

ここで八五郎は思いつく。

「大家さんのところに持っていこうとしていた店賃を盗まれたと言えばいいんだ。これはありがてえ」

そう言って八五郎は大家を呼び泥棒が入ったことを伝える。

「あと、布団もとられた。表は唐草、うらは花色木綿のふとん」

あとは、例えば絹物は盗まれなかったか?

「ええ、羽二重がとられました裏は花色木綿のやつが」

その他は?

「あとは南部鉄びんに、たんす、あとはお札だ」

お札か…

「裏は花色木綿」

何でも花色木綿をつけりゃあいいってもんじゃねえんだ。

あまりにでたらめなことを言う八五郎に耐え切れず、泥棒は縁の下から出てくる。

おい、さっきから聞いてれば笑わせるない。

あっしは泥棒だけど、なんにもとるもんなんかありませんでした

なにも盗らなくたって、ひとの家へしのびこめば泥棒じゃねえか。

よし、親分に教わったぞ。

まことに申しわけございません。貧の盗みの出来心でございます。

と言って涙のひとつでもこぼせば銭をくれますか?

誰が銭なんかやるもんか。

しかしまあ、何か盗られたわけじゃないし、出来心と言うんだから許してやってもいいんじゃないか。

おい、八五郎、おめえのところにそんなに盗られるものはないと思ってたんだ。
でたらめばかり言いやがって。
どうしてあんなウソばっかり並べたんだ?

「へえ、大家さん、これもほんの出来心でございます。」

解説

東京では「花色木綿」、大阪では「盗っ人出来心」

東京では「花色木綿」といい、大阪では「盗っ人出来心」ともいう噺。

原話は、十返舎一九の笑話本『江戸前噺鰻(えどまえはなしうなぎ)』(文化5年/ 1808年)にある「ぬす人」という小噺です。

八代目春風亭柳枝が『花色木綿』として八五郎と家主の盗品問答をワンパターンながらリズミカルに演じた。

また、これをワンパターンでなく演じたのは五代目柳家小さんと十代目柳家小三治の『出来心』。

花色木綿とは?


画像出典:男もの遠し裏「花色木綿」- 着物縫製室 製作の日々2

八五郎と大家のやりとりで出てくる「花色木綿」。

これは裏地としてよく使われるはなだ色(縹色)に染めた木綿のことです。

もうひとつのオチ(サゲ)

今回あらすじで紹介した落ちが一般的です。

しかし八代目春風亭柳枝の『花色木綿』などのように以下のように落とすパターンもあります。

大家「どこから入ったんだ?」

泥棒「裏からです」

大家「裏ってのはどこだ?」

泥棒「裏は花色木綿です」

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