青年海外協力隊の面接会場で仲良くなった友達に「JICA関係者は必読の書」と紹介された『ボランティア・スピリット』。
実際に協力隊として数か月のあいだ活動した今ふたたび読んでみると「そうそう!」「あるある!」と相槌が止まりませんでした。
自分で協力隊ブログを運営していてこんなこと言うのは悲しいですが、協力隊ブログみるよりよっぽど協力隊のことがわかるかも。
ボランティア・スピリット
『ボランティア・スピリット』は著者である伴正一さんが青年海外協力隊事務局長での5年間の勤務を終えて書かれたものです。
私は本を読む前に、著者の経歴を見るのですがWikipwdeiaによると、青年海外協力隊事務局長に就任されるまでの経歴は
東京大学⇒弁護士⇒外務省とスーパーエリートであり、かつ伴さんには協力隊員としての経験はありませんでした。
正直読む前は「この経歴で本当に協力隊(現場)のことがわかるのか?」と半信半疑でしたが、まるで協力隊に言ったかのようにその実態を把握されていて驚きました。
本書の構成は以下の通りです。
はじめに
一、隊員
二、青年海外協力隊
三、協力隊参加の意義
四、海外協力活動
五、村
六、教室
七、現場勤務型
八、本庁、試験所型
九、ボランティア
十、実践者
十一、青年
十二、立場と品位
十三、立場と国益
一~四、九~十三は協力隊及び海外ボランティア概論的な内容で、五~八はいわゆる「職種」別の内容になっています。
青年海外協力隊が陥りがちな2つの落とし穴?
1つ目の後とし穴
職種のちがい、任地のちがいなどが重なって、隊員の職場環境は文字通り千差万別である。そのなかには、西洋人が統治していたころの厳しさが根づいていて、日本にいるときよりも厳格な職場規律が生きている場合もあるにはあるが、概して、日本での職場よりはノンビリしている。そのうえにお客様扱いされる面もある。
職場環境がこういう具合で、自分の技術がまだしっかりしていないとなると、はじめはなんとかしなくてはと自分を励ましていても、そのうちに息切れがし、ノンビリ・ムードに感染しやすい。その日暮らしの日々を送るようになり、つい、投げ気味のまま無為に二年を過ごしてしまうことになりかねないのである。
確かに、私の配属されているムウォゴセクター事務所でも、職場はかなりノンビリムードです。
直属の上司がいるわけでもなく、エグゼクティブも自分を管理する様子はなく自由にやらせてくれています。正直サボろうと思えばいくらでもサボることができてしまう状況。
自分の目的ややるべき事を意識していないと真面目に活動を続けることすら難しいでしょう。
2つ目の落とし穴
言葉の遊戯のようだが、〃技術の移転〃という概念で〃協力活動〃をとらえていると、やることがどうもおかしくなる。どんな具合におかしくなるかというと、隊員の持ち合わせている技術が中心(座標軸)となり、あたかも中世の天動説がそうであったように、自分中心の考えが展開していくのである。設備やシステムを考えるにあたっても、自分の技術を発揮したいという潜在的願望が先にたって、〃現地に根づきそうなものを〃というもっともたいせつな〃思考展開の基準〃がどこへやらいってしまう。
こう考えてくると、〃優雅な休暇〃になる心配よりも、独り相撲の勇み足になる心配のほうが大きい。
かと思えば力みすぎても「独り相撲の勇み足」になってしまう。
自己のモチベーションは保ちつつも、そのやる気や考えを押し付けるのではなく現地の風習・文化に自分をカスタマイズしながら活動をしなければなりません。
協力隊参加の意義
例外はあるだろうが、純粋奉仕の気持ちで取りかかれる限界は優に越えている。精神面でなら自分の収穫を求めていいではないか。ボランティアであること、経済的には一文の得にもならないという点で認識がしっかりしていれば、それでじゅうぶんだと思うのである。
精神面での収穫なるものをいま少しく掘り下げて考えてみたい。まずそれは無形のものであり、計量することはむずかしい。しかし、人間にとっての価値としては、経済的なものにくらべて遥かに大きいことがある。帰国隊員のほとんどが「行ってよかった」と言っているのは、二年の奉仕期間に〃失った〃と思うものと、その間の協力活動を通じて〃得た〃と思うものとを比較して、無形のものながら後者の重量を心に大きく感じとっているからであろう。
精神面での収穫が、動機の面でも、成果の面でも、これだけ大きい比重を持つとなると、「それでは海外での協力清動は、奉仕とはいっても究極的には自分のためのものにすぎないのか」 という最終的な反問、極限的な課題との対決を迫られる。
結論的に言うと、〃他人のためにつくしながら、それが自分の人間形成に資するとして、精神的収穫ととらえる〃境地にいたれば〃自分のその行為〃を、人のためと考えようがおのれのためと考えようが、もはやどちらでもいい。
この本で一番共感した部分。
会計士をやめて協力隊に参加することが決まったとき、すくなからず「もったいない」という人がいました。
確かに経済的にはかなりもったいないことをしているはずです。ただその反面得るものもたくさんあると思っていました。
本書でも述べられている通り「精神的収穫」もそうですし、さらに私の場合は協力隊終了後にルワンダに戻って来て起業をする予定なのでそのための「準備期間」の意味も持ち合わせています。
国の制度を利用して、そしてボランティアという立場でありながら、極めて個人的なリターンを期待している訳です。
しかしそれが悪いこととは思っていません。「ルワンダをもっと良い国にする」という一貫した信念があるからです。
この意味では「ボランティア」か「起業家」かという名目の違いこそあるものの、協力隊の2年間とその後の人生で私がやることに代わりはありません。どちらも繋がっているんです。
「他人のため」という大事な柱さえ守っておけば、それ以外のところで精神的収穫を期待しようがなんだろうが構わないと考えています。
協力隊に興味のある方はぜひ一読をおススメします。
今回ご紹介したのはごく一部で、それ以外にも協力隊の歴史から考え方から多くのことを学ぶ事が出来ます。
1978年に発刊されたものなので、情報として古いものもありますがほとんど色あせていません。
そしてなんと、以下のサイトで無料で全て読むことが出来ます!
ボランティア・スピリット 伴 正一 講談社 1978.3.30