こんにちは、アフリカ在住ブロガーのぴかりん(@dujtcr77)です。
今回は落語『死神』の紹介をします。
あらすじ
借金で首が回らなくなった男。
金策に駆けまわるも金を貸してくれる人はいない。
女房にも「甲斐性なし」「あんたなんか死んでしまえ」とののしられる始末。
でも、どうやって死のう…
もともと自殺などは不向きな男である。
でも、首の吊り方わからないなあ…
「教えてやろうか」
驚いて不気味な声のした方を振り向く。
ひどく痩せて着物ははだけ、あばら骨が浮き出ている、
鋭い眼光の老人が佇んでいる。
あっちへ行け!
安心しろ、お前はまだ死ぬ運命にない。
人間には寿命というのがあってな、それが残っているうちは死にたくても死ねねえんだ。
今日は金儲けの方法を教えてやろうと思ってな。医者になれ。
死神が言うにはこうだ。
すべての病人には人の目には見えないが死神が付いている。
死神が枕元にいれば病人は助からない、
足元にいる場合は死神を退散させることができる。
死神は消えて病人はたちまち元気になる。
アジャラカモクレン…キューライス?…テケレッツのパ…
(パン、パン)…
…あれ?死神が消えた!?
死神が言ったことはなるほど本当だったのか。
家に帰って適当な看板を作って待っていると患者が来た。
やってきたのは大富豪。
死神は運よく足元にいる。
さっそく呪文と拍手、
死神は消えて見事に患者は全快し、名医の誕生だ。
一躍おとこは時の人となり、引っ張りだこ。
たちまちに財をなした。
新しく女を作ってバカンスへ。
贅沢な暮らしで全財産を使い果たした。
金も女も失って再び江戸へ戻り、看板をあげる。
しかし今度はなかなかうまく患者がこない。
さすがの男も焦り始めた。
ある大富豪からの依頼があったが、これまた死神は枕もとだ。
しかし治せば1万両もの大金を払うという。
男は金に目がくらんだ。
病人の布団の四隅に男四人を配置。
死神がうとうとしている隙にせーので持ち上げて布団を180度回転させた。
死神が足元きたところですかさず
(パン、パン)
病人は全快。
男が大金を手にして上機嫌で歩いていた帰り道。
よりによってこのおれをあんな目にあわせるとは。
今回の失態で死神は制裁の憂き目にあったという。
おれと一緒にこい、と死神に連れられて地下の世界へ入っていった。
着いた先では無数のろうそくが灯っている。
すべて人間の寿命なのだという。
金に目がくらんだから、あの病人の寿命と換えたんだ。
か、金は全部お前さんにあげるから!
な…なんとかしてくれ!頼むよ…!
死神はそう言って燃え残りのろうそくを渡した。
失敗して消えたら死ぬ。
はやくしないと、消えるよ。
男はつごうとするが、
手が震えてしまってなかなかうまくいかない。
ほら、早くしろ。消えると死ぬよ。
解説
三遊亭円朝 作
この噺は三遊亭円朝の作とされています。
死神を暑かった落語は珍しく、というのもイタリアのオペラのプロットからヒントを得ており、
さらにその原話はグリム童話にあるといいます。
サゲ(落ち)は何パターンもある
今回は円朝作のサゲ「消えた」としましたが、
そのパターンは噺家ごとに、そして噺家によっても時代によって変わってくるのが面白いところ。
三遊亭圓生は円朝作に基づいて演じていましたが、
消えたときには息絶えているはずだから「た」で倒れるのは理屈に合わないという指摘を受け、
「消える」と言って倒れていることもありました。
しかしこれでは結末として締まりがないと感じたのか、
再び「消えた」に戻す代わりにそのセリフを主人公でなく死神に言わせることに。
立川志の輔のサゲ
数あるサゲの中でも私のお気に入りは立川志の輔さんのもの。
主人公は新しいろうそくに火をつける事に成功します。
悔しそうにする死神が待てというのを振り切って暗い洞窟をそのろうそくの光を頼りに外へ。
「どうしても行くのか?じゃあしょうがない」
と死神。
「じゃあ、死神さんもお元気で!」
とご機嫌に帰ろうとする男に最後に死神がひとこと。
「外はこんなに明るいのに、もったいないんじゃないか?」
「ああ…フッ(自らろうそくの火を消す)」
呪文もひとそれぞれ
今回は『落語名作200席 上』(角川ソフィア文庫)を参考に
「アジャラカモクレン キューライス、テケレッツのパ」としましたが、
これも噺家さんによってそれぞれ違ってきます。
前述の志の輔師匠は「ちちんぷいぷい だいじょうぶい テケレッツのパ」と言っていたりします。
死神の演じ方もまた人それぞれで、
同じ話を違う落語家さんで楽しむという落語の醍醐味をより味わうことのできる作品ですね。
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