※2017年9月20日最終更新
こんにちは、ルワンダ会計士ブロガーの根本(@dujtcr77)です。
本の要約をしているサイトを見かけたりすることってありますよね?
またブロガーやサイト運営者であれば要約を含めた記事を書いたことがあるかもしれません。
「本を要約して公開する」という行為は問題なのか?
今回は本の要約をすることの「違法性」と「マナー」について書いていきたいと思います。
違法性について(著作権法上)
文化庁 著作権なるほど相談室の見解
まずは文化庁のホームページで以下のような質問を発見しました。
どの程度のあらすじかによります。
ダイジェスト(要約)のようにそれを読めば作品のあらましが分かるというようなものは、著作権者の二次的著作物を創作する権利(翻案権、第27条)が働くので、要約の作成について著作権者の了解が必要です。
また、作成された要約をホームページに掲載し送信する行為(複製、公衆送信)も元の作品の著作権者の二次的著作物を利用する権利(第28条)が働くので、要約の作成と同時に当該著作権者の了解を得ておく必要があります。
一方、2~3行程度の極く短い内容紹介や「夭折の画家の美しくも哀しい愛の物語」などのキャッチコピー程度のものであれば、著作権が働く利用とは言えず、著作権者の了解の必要ありません。
引用:「最新のベストセラー小説のあらすじを書いて、ホームページに掲載することは、著作権者に断りなく行えますか。」著作権なるほど質問箱 – 文化庁
この回答を見る限りでは、本の要約を作成することは基本的に「翻案権」が働き、著作権者の了解が必要になるようですね。
またあわせて、その要約をホームページなどに掲載する場合も著作権者の了解が必要であるようです。
ただし、2,3行のごく短いものやキャッチコピー程度の場合は許可をとる必要はない、と。
つまりまず気を配らなければいけないのは要約に対して「翻案権」が働くかどうかといったところになりそうです。
翻案権とは?
具体的にどのような場合に翻案権は働くのでしょう?
著作権法の第27条(翻訳権・翻案権)に以下のように定義されています。
「著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。」
これだと本の要約が翻案権侵害になるか少しわかりづらいですね。
もう少し絞って調べてみると、言語の著作物の翻案について最高裁で定義されていました。
言語の著作権の翻案の意義について最高裁の判決(最判平成13・6・28 民集 第55巻4号837頁)によれば、
「言語の著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。」
つまり本に限って言えば、その本(著作物)とテーマや考え方などに同一性があるだけでなく、その表現上の同一性があり要約を読んだだけでその本の本質的な部分を感じ取ることができる場合には翻案権の侵害になりそうです。
御幣を恐れずにもっとざっくり言うと、
「その本から学んだことを自分なりの表現でまとめるのはオッケーだけど、表現とか元の本の雰囲気をそのまま残してるのはマズイよ」
ということになるでしょうか。
弁護士ドットコムにおける弁護士の見解
弁護士ドットコムにおいても本の要約に関する質問を発見しました。
回答1
知識を公表することは問題ありません。(中略)
原作品を読まなくても内容が分かるような要約は、著作権法上の「翻案」に該当します。
著作権者の許諾がないと、著作権法違反となる可能性があります。ごく短い要旨程度のものであれば、問題はありません。
回答2
著作権法は、具体的な表現を保護するする法律です。
そのため、参考とした書籍の具体的な表現を離れて、その内容を抽出した場合は、著作権侵害とはなりません。
やはりこの個別の回答を見ても、著作権が問題になるのはその「表現」に対してであるようです。
本から得た知識自体を公表することには問題はないと。
ただ、コラムイン事件における東京地裁の判決(平成6年2月18日判決)では、
「要約は、これに接する者に、原著作物を読まなくても原著作物に表現された思想、感情の主要な部分を認識させる内容を有しているものである。」
としています。
なので、表現方法は違えどその本をまるまるまとめてしまうような行為は避けた方が無難な気がします。
まとめ(本の要約の場合)
- 翻案権が働く場合には、本の要約及び記事へのアップは著作権者の許可が必要になる
- 「表現的な同一性」を残して要約することは翻案権の侵害にあたる
- 「表現的な同一性」がなくても記事を読めば本の主要な内容がわかってしまうとマズイ
今回の記事においては文化庁や弁護士の見解など信頼性の高いものを引用しました。
しかし、これらも一般的な見解を示したものであり個別の事象においては当てはまらない場合もあります。
またこれらに対する私の記述も素人の考えになります。
マナーについて
本の要約に関しては、まず法律に気をつけなければなりません。
でも同じくらい大切なのがマナーなのではないかと思っています。
たとえば法律上は問題なくても、自分が魂を込めて書いた本が何者かによって勝手にまとめられていたら。
著者の方はどう感じるでしょう?
まとめ方によっては本が売れる可能性もありますし、嬉しい方もいるかもしれません。
でも自分だったら許可なしに本の要約がアップされていたらいい気はしないですね。
紹介だったら嬉しいですけど、「これ読んだだけでだいたいわかっちゃうじゃん!」て記事はイヤです。
なのでできれば何らかの手段でコンタクトを取って許可を得るなり、著者の方が嫌な思いをする可能性があるならはじめから書かない方が良いでしょう。
さいごに
私を含め、ブロガーは本の紹介をすることも多いと思います。
その際に法律に引っかからないようにするために最低限の知識を蓄えておくことはもちろん必要です。
しかしそれだけでなく、その作品を作るのに関わった人が自分の記事を見てどう感じるか?
ここもよく考えなければいけないと思います。
例えば自分だったらPV稼ぎのためにキーワードを詰め込みまくって本の内容を要約されていたら嫌です。
でも仮に似たような内容でも作品に対する愛を感じられたり、敬意をもって紹介されていたら嬉しく感じます。
本の要約に限らず他人の作品を紹介する時には「知識」だけでなく「愛」と「敬意」を持っていたいものです。
ちなみに今回の記事を書いていて「マズいかもな」と感じた記事は削除しました。
記事を書く方はどのように気を付けていますか?
また自分が著者だったらどんな記事を書かれたら嬉しい、悲しいですか?