「なんか頭で考えすぎているかなぁ」
そう思うたびに読み返したくなる本のひとつ『星の王子さま』(サン=テグジュペリ)。
私はこの本を読むことを「心のクリーニング」と呼んでいます。
現代の大人たちの大半がドキッとするような星の王子さまのことばを紹介します。
目次
サン=テグジュペリ『星の王子さま』
この本の著者サン=テグジュペリはフランスの作家であり、元操縦士です。
『星の王子さま』は彼の書いた長編小説で、世界200以上の国と地域で出版・翻訳されています。
実際に「星の王子さまミュージアム」に行くと、様々な言語で書かれた『星の王子さま』が展示されています。
パイロットがサハラ砂漠に不時着し、
そこで他の星から来た王子さまと出会うところから物語が始まります。
『星の王子さま』を読んだことのない方や、既によんだ方のおさらいとしてあらすじを紹介したいと思います。
あらすじ
サハラ砂漠に不時着した主人公の「ぼく」
操縦士の「ぼく」は、サハラ砂漠に不時着します。
飲み水は1週間分しかなく、それが尽きる前に飛行機を修理して砂漠から脱出しなければならない。
そんな死の瀬戸際で不安を抱えるぼくは翌朝、不思議な恰好をしたひとりの男の子と出会います。
その男の子と話ているうちに、彼は<小惑星B612>からやってきた王子さまであることを知りました。
王子さまの星は家くらいの大きさで、そこには3つの火山とバオバブの木と、そしてたった1輪のバラが咲いているだけでした。
王子さまは自分の星に咲くバラを美しく感じ、大切に世話をしていました。
しかしある日、バラの花とけんかをしたことをきっかけに旅にでます。
王子さまが訪れた6つの星
王子さまは自分の星をでて、6つの星でそれぞれこんな人たちに出会いました。
- 王様⇒命令をして偉そうにしている
- うぬぼれや⇒自分が褒められることしか考えていない
- 酔っ払い⇒酒を飲むことを恥じ、それを忘れるために飲む
- ビジネスマン⇒自分の所有する星をひたすら数える
- 点灯夫⇒1分間に1度ずつ、火をつけたり消したりしている
- 地理学者⇒書斎に閉じこもって実際の土地を知らない
どうにも変な人たちばっかりだったな…
そう思い王子さまが訪れた7番目の星は「地球」でした。
王子さまは地球を見てこんな感想をもちます。
地球には
111人の王様と
7000人の地理学者、
90万人の実業家、
750万人の酔っぱらい、
3億1100万人の大物気取り、
46万2511人の点灯人
がいる。
地球で王子さまが出会った「ヘビ」と「キツネ」
地球の砂漠に降り立った王子さまはまずヘビに出会います。
その後、王子さまが長い時間をかけて砂や、岩などを横切って歩いていきました。
そこで見たものは庭に咲くたくさんのバラ。
王子さまはバラは世界にたった1つ、自分の星のあのバラしかないと思っていたので、
ショックを受けて泣いてしまいます。
そのとき、キツネが姿を現しました。
キツネとのやりとりの中で、王子さまは自分の星のバラと庭で見たたくさんのバラは違うことに気が付きます。
王子さまの星のバラは、王子さまと一緒の時間を過ごし、一生懸命面倒もみてやった。
この時間こそが、たった1つの自分のバラを他とは異なる1番のバラにしていることを悟ります。
王子さまとのお別れ
こんな話を聞きながら、飛行機を修理していた「ぼく」。
飛行機がなおったことを王子さまに知らせにいくと、そこでは王子さまとヘビが話していました。
地球に来てもうすぐ1年になる王子さま。
1年前と星の配置がまったく同じ時にヘビに噛まれることで、身体を置いて自分の星に帰るとのこと。
悲しむ「ぼく」に王子さまが言います。
「キミが夜空にまたたく星を見るとき、ボクがそれらの星のうちのひとつに住んでいて、そこで笑っているから、キミには、全部の星が笑っているように見えるはずだよ。
つまり、キミにとって、星っていうのは、何よりもまず、笑う存在だっていうことになる」
「さあ、もうさよならだよ」
そう言って王子さまはゆっくりと倒れました。
星の王子さまが残したおすすめ名言
「大人たちは、数字を見れば安心するからです。」
もしあなたが大人たちに対して、
「バラ色のレンガでできた、とても美しい家を見ました。窓にはゼラニウムの花が飾ってあり、屋根には鳩がとまっていました。」
と言っても、大人たちはそれがどんな家なのかまったく見当もつきません。
その代わりに、あなたがこう言ったとしましょう。
「1億2千万円の家を見ましたよ。」
すると彼らはこう言うでしょう。
「それはさぞかし素晴らしい家だったでしょう!」
引用:『星の王子さま』(ゴマブックス株式会社)
おとなたちは本質的なことについては何も質問しない、と王子さまは言います。
新しくできた友達についても次のような質問はしません。
- どんな声をしているんですか?
- どういう遊びが好きなんですか?
- 蝶々は集めていますか?
その代わりに、こんな質問をします。
- 何歳ですか?
- きょうだいは何人いますか?
- 体重は何キロですか?
「その理由を知ろうとすることが、それほど大切なことじゃないって言うの⁉」
何百万年も前から、バラの花はとげをつけてきたんだ。
それなのに、何百万年も前から、ヒツジは花を食べてきた。
そんなふうに何の役にも立たないとげを、どうしてバラがずっとつけてきたのか、その理由を知ろうとすることが、それほど大切なことじゃないって言うの?
引用:『星の王子さま』(ゴマブックス株式会社)
主人公の「ぼく」が故障したエンジンを修理している途中、王子さまはしつこく質問をします。
―ヒツジって、花も食べるの?
「ヒツジは、目の前にあるものは何だって食べるさ。」
―とげのある花も?
「もちろん、とげのある花も食べる」
―だったら、とげは何の役に立つの?
―ねえ、とげは何の役に立つの?
「そんなことわからない」と言うような質問を繰り返され「ぼく」は怒ってしまいました。
「うるさいなあ!どうでも良いようなこと聞かないでくれ。
ぼくは、いま忙しいんだ!」
そんな「ぼく」に王子さまが放ったのが見出しのセリフです。
「バラの行動に基づいて判断すべきだったんだ」
意地悪な言葉の背後には、バラの優しさがかくされていた。
そのことに、ボクは気づかなくちゃいけなかったんだ。
引用:『星の王子さま』(ゴマブックス株式会社)
この人どうしていつも嫌な事ばかり言うんだろう?って人いますよね。
その人にももしかしたら隠された優しさや、何か理由があるのかもしれません。
「ヘンじゃないのはこの人だけだ」
あの人は、きっと、<王様>や、<うぬぼれや>や、<酔っ払い>や、<ビジネスマン>からは馬鹿にされるだろう。
だけど、ヘンじゃないのはこの人だけだ。
だって、この人だけが、自分以外の人たちのために働いているんだもの。
引用:『星の王子さま』(ゴマブックス株式会社)
星を転々とする王子様が、5番目の星で出会った点灯夫。
この星は1分間に1度回転するため、その点灯夫は1分間のあいだに火を点けたり消したりしなければならず、休む暇がありません。
大好きな眠ることも我慢してただただ規則にしたがってまじめに仕事をしています。
王子さまは今まで出会った人たちを思い出します。
自分の命令に従わないことが許せない<王様>、自分を崇めさせる<うぬぼれや>、星を所有しようとする<ビジネスマン>。
点灯夫は、きっとこの人たちには馬鹿にされるけど、王子さまは友達になれるのはこの点灯夫だけだと感じます。
同じ時間に来なくちゃ
もし、君が、午後の四時に来ることになっていたら、三時ごろからぼくは嬉しくなる。
そして時間がたてばたつほど、ぼくはどんどん幸せになるだろう。四時になっても君が来なかったら、もう心配で心配で、仕方がなくなる。
幸福っていうのがどんなものか、ぼくは知ることになるだろう。だけど、もし、君がやって来る時間がわからなかったら、ぼくはいつ心の準備をすればいいのかわからない…
だから、ものごとは、きちんと決めておくことが大事なんだよ。
引用:『星の王子さま』(ゴマブックス株式会社)
王子さまにキツネが言った言葉。
たしかにこれはわかりますね。
会いたい人に会う直前って、なんともいえないワクワクがあります。
反対に会えるはずの人が時間通りにやって来ないとソワソワしたり。
こういうちょっとした感情に「幸福」が隠れているのかもしれません。
「大切なことは、目に見えない…」
それでは、大事な秘密を教えてあげよう。
とても簡単なことさ。
それはね、ものごとはハートで見なくちゃいけない、っていうことなんだ。
大切なことは、目に見えないからね
引用:『星の王子さま』(ゴマブックス株式会社)
王子さまの星に咲いていたたった一輪のバラ。
この世にバラが一輪しかないと思っていた王子さまは地球に咲く無数のバラを見てショックを受けます。
しかし出合ったキツネとの会話を通して大切なことに気が付きます。
王子さまのバラと他のバラには「バラのために使った時間」という決定的な違いがあるのです。
そして王子さまは言います。
だって、ボクのバラだからね
キミたちはキレイだね。だけど、まだ中身がない。
だれもキミたちのために死のうとは思わないはずだからね。
もちろん、通りすがりの人が見たらボクのバラも君たちもまったく同じに見えるだろう。
だけど、キミたちを全部合わせたとしても、ボクのバラにはかなわない。あのバラは、たった一輪でも、キミたち全員より重要なんだ。
なぜなら、ボクが、水をやったり、ついたてを立てたり、ガラスの器をかぶせたりして世話をしたからだ。
ボクは、あのバラのために、毛虫だってやっつけてあげたんだ。(中略)
不平不満だって聞いてあげたし、自慢するのにだって付き合ってあげた。
バラが、黙りこくっても、我慢してそばにいてあげた。
だって、ボクのバラだからね。
引用:『星の王子さま』(ゴマブックス株式会社)
自分がいまいるところに満足できないんだ
― 自分のいるところに満足できないの?
「そうさ、自分がいまいるところに満足できないんだ」
引用:『星の王子さま』(ゴマブックス株式会社)
王子さまが転轍手に訪ねて帰ってきたセリフ。
子どもたちだけが、自分が何を探しているか知っているんだね
「子どもたちだけが、顔を窓にくっつけて、夢中で外を見てるんだ。」
― 子どもたちだけが、自分が何を探しているか知っているんだね。
引用:『星の王子さま』(ゴマブックス株式会社)
転轍手から話を聞いて王子さまが出した結論は「子どもたちがけが自分の行き先を知っている」というもの。
子どもはたしかに本当に欲しいものを純粋に追いかけます。
果たして、大人たちが進む先には本当に彼らが求めているものがあるのか…?
「人間たちは、自分たちが何を探しているのかわかっていない」
人間たちは、急行列車に乗り込むけれど、自分たちが何を探しているのかわかっていない。
やたら動き回るだけで、自分たちが堂々巡りしていることに気づかないんだ。
引用:『星の王子さま』(ゴマブックス株式会社)
キミには、全部の星が笑っているように見えるはずだよ
キミが夜空にまたたく星を見るとき、ボクがそれらの星のうちのひとつに住んでいて、そこで笑っているから、キミには、全部の星が笑っているように見えるはずだよ。
つまり、キミにとって、星っていうのは、何よりもまず、笑う存在だっていうことになる。
引用:『星の王子さま』(ゴマブックス株式会社)
あらすじでも紹介したこのセリフ。
とても王子さまらしい表現でグッとくるものがあります。
こんな感性で生きることができればより人生がキラキラとしそうですね。
『しくじり先生』でオリラジのあっちゃん(中田)も取り上げた
テレビ朝日の『しくじり先生 俺みたいになるな‼』ではオリラジの中田さんが「今だから読みたい文学」として『星の王子さま』を取り上げました。
ここではあっちゃん独自の解釈を披露。
名言のところでも紹介したように、王子さまは自分の星のバラはその過ごした時間のためにたった1つのバラなんだと気が付きました。
そこからあっちゃんが導き出した教訓がこちら。
「運命の人」とは突然出会うわけではない
相手を大切にしながら過ごした時間が
少しずつ相手を「運命の人」にしていく
だから、運命の人かどうかなんて関係ない。
この人をこれからずっと大事に大事にしていくことで、自分にとって運命の人にしていく。
とても素敵な考え方ですね。
何度も読み返したい
読むたびに、忘れかけていた大切な事を思い出させてくれます。
仕事や勉強に夢中になればなるほど、王子さまの言葉をわすれて<ビジネスマン>になってしまう自分がいるんですね。
頑張り過ぎている、頭で考えすぎている、そう感じる度に読み返して、大切なことを思い出したい本です。
英語版もおすすめ
あまりボリュームのある本ではなく、英語も難しくないので英語版で読むのもおすすめです。
また少し雰囲気が違ったりするので日本語版と読み比べても面白いかもしれません。
「星の王子さまミュージアム」にも行ってきました!!
『星の王子さま』が好きすぎて、箱根にある「星の王子さまミュージアム」に行ってきました。
その時のレポートを以下の記事でしていますので興味のある方はこちらへ!
「星の王子さまミュージアム 箱根 サンテグジュペリ」原作ファンにはたまらないがちょっと気になることが…