「逃げる」という言葉にはマイナスのイメージを持つ人が多いです。
確かにやりたくない事や嫌な状況から逃げてばかりというのはあまり好ましいことではありません。
しかし「逃げる」という選択肢をもつことは人生において大切な事だと今までの経験から学びました。
ドイツ語から逃げていた大学生時代
私は、東京外国語大学のドイツ語専攻出身です。
ドイツ語に縁もゆかりも、そして興味もないのに何故かドイツ語専攻に入ってしまい、案の定全く興味を持てず、週6コマの授業に苦痛を覚える日々を送っていました。
Ich kann nicht Deutsch spurechen.(私はドイツ語が話せません。)
この1文だけは一生忘れない自信がある。
どうしても苦痛で、どうやったらドイツ語から離れる事ができるかに左脳の容量ほぼ全てを使っていました。
つまりドイツ語から「逃げていた」訳です。
しかしドイツ語からの逃げがあったからこそ、今の自分はたくさんの大事なものを手に入れました。
ドイツ語専攻の仲間
大学に入ったばかりの頃は、かなり偏った価値観の持ち主でした。
今で言う「パーリーピーポー」的な、楽しく飲んで馬鹿出来る友達としか気が合わないと決めつけていました。
そして入学したその日、ドイツ語専攻のメンバーを見るとパーリーピーポー的な人はひとりもいませんでした。
「入る学部ミスった」
正直そう思いました。
しかし同じドイツ語専攻なので必然的にコミュニケーションの機会は出てきます。
一番は、「ドイツ語の宿題を見せてもらう事」でした。
とにかくドイツ語から逃げていた私は、宿題を写させてもらったり、授業中に当てられても答えられず隣の友達から答え聞いたりと、とにかく頼っていました。
頼っていたというよりはもはや寄生ですね…
そうしているうちにあることに気が付きます。
「あれ、なんか居心地良い?」
なんか普通に話してて楽しかったんです。今考えると当然のことですが、自分と違った価値観を持っている人たちと話すのは刺激的で楽しい。
そんな当たり前の事に気が付かせてくれて、世界を広げてくれたのがドイツ語専攻のメンバーでした。
卒業後も年に何回か集まって今でも仲良くさせてもらっている大事な仲間です。
会計士
ドイツ語のおかげで、見事に「言語アレルギー」になってしまった私はなんとか他に夢中になれるものがないか探しました。
もともと理数系科目が好きだった私は、なんか数字を扱う科目とか資格とかないかな~と漠然と考えた結果、簿記に出会います。
見事にハマりました。
当初は日商簿記1級を取ろうと思ったのですがそれでは物足りなくて気が付いたら大原の公認会計士講座に申し込み。
朝まで酒を飲むか麻雀をしていた日々から一転、4時50分に起きて夜10時まで勉強する毎日に変わりました。
会計士試験に合格するまでの1年半、ほぼ毎日このペースを崩さずに生活をしていて、周りからは大変そうだのストイックだの言われましたが、ただただ楽しかったです。
あんなに夢中になれるものはこの先の人生でもなかなか見つからないと思います。
有限責任監査法人トーマツ
会計士試験に合格して、私は有限責任監査法人トーマツという法人に入り会計監査の仕事をしました。
会計士試験を順調にこなして少し天狗気味だった私の鼻は、入社直後にへし折られました。
優秀な人多すぎ。
同期もそうだし、一緒に仕事をさせてもらった先輩、後輩。
ワケがわからずパニくっている私を見捨てず育てて頂き、本当に感謝しています。
今でも仕事や活動で困った場面があると、「この先輩ならこう考える」、「あの人だったらこうしてるな」と自然とトーマツで出会った方々の顔が浮かんできます。
「逃げる」を1つの選択肢として考える
これらの経験から、
「逃げる」を万策尽きた時の敗北の1手としてでなく、数ある選択肢の1つとしてとらえる事を学びました。
もちろんいつも逃げてばかりではいけません。
でも何か大きなものが自分の前に立ちはだかって、それと戦って再起不能になってしまうくらいだったら、「逃げる」ってのも「戦う」に負けないくらいアリな選択肢だと思います。
人気RPGのドラクエだって、「たたかう」、「まほう」みたいなそうそうたるコマンドの中に「にげる」がありますよね。
結果論ですが、私の場合は逃げたことによって多くの大切なものを得る事ができました。
「逃げる」事をネガティブな選択肢としてではなく、他の選択肢と同列に捉えてみると、気持ちも楽になり人生の幅も広がるかもしれません。